事例紹介

Q&A

医療法に関する「最高裁判決」。重要な意義を有する判例となりました。

平成19年10月19日最高裁第二小法廷で下された判決は敗訴でしたが意義のあるものでした。
事案は、東京都知事が医療法人Aに与えた病院開設許可処分につき、この処分が東京都と医療法人の癒着に基づく違法なものであるとの理由で、上記開設地の医師会であるX及び医師62名の原告が当事務所の石上らの弁護士を代理人とし、東京都知事石原慎太郎を被告として上記許可処分の取り消しを求めたというものです。

本件で東京地方裁判所、東京高等裁判所及び最高裁判所は、Xらが許可処分の名宛人ではなく、この訴訟を提起する法律上の利益即ち原告適格を有しないという従来の判例理論に基づいて残念ながら我々の訴えを退けました。
しかし、この最高裁判決には大きな意義がありました。
即ち、東京都は医療法30条の4以下に定める医療計画に基づく新設病院の病床数の制限や増床の規制はもとより、病院開設等についての手続きを自分達で事細かに定め、これを金科玉条の如く振りかざしてきました。例えばその地域での総基準病床数(例えば5,000床)を1床でも超える事になってしまう病床数を有する病院の新設をしようとすると事前協議の段階で高圧的にこれを拒否し、病床数を減らさない限り事実上その病院の新設を認めないという運用をしてきました。しかし、本判決はこの運用が違法であることを明確に断定し、要するに医療法7条の要件(物的人的施設の具備)さえ満たしていれば、同法30条の4以下の規制に抵触しても病院の設立は自由に出来ると判断しました。つまり、行政指導の名の下に医師を雁字搦めにしていた東京都の権力的行政が誤りであることが判明したのです。
又、同じ医療法の中で論理的に矛盾する条文が存在するという奇妙な事実も我々の指摘により明らかになりました。
これらのことから、本判例は重要な先例としての意義を有すると思われ、既に各種判例評釈や判例解説に掲載されております。(平成19年度重要判例解説P50〜51、判例時報1993号P3〜8)し、ロースクールや大学の法学部の講義でも取り上げられているようです。