為替デリバティブ問題対策研究会

為替デリバティブ110番

第1回:2011/03/04 10:00-17:00:今回の電話無料相談は終了致しました。
>>第1回為替デリバティブ110番開催要項
>>為替デリバティブ110番でわかった被害の実態

デリバティブ被害の実態について

石上法律事務所
弁護士 石上晴康

デリバティブ取引の怖るべき実態

デリバティブ取引の仕組みは前頁の通りであるが、殆どの顧客はこれを良くわからないままに銀行の誘導で通貨オプション取引を契約、外国為替予約取引契約を締結している。急激な為替の変動に対処する為に為替を予約して、損失をヘッジするというところまでは理解出来ても、オプション、コール、プット、レバレッジ、ノックアウト、フォワード、ノックイン・オプションなどの用語を見ただけで頭が痛くなりそれ以上の思考を放棄する人が大半ではなかろうか。しかし、その殆ど理解できない通貨オプション取引の結果現在発生している現象の悲惨さは極めて分かり易い。以下にこれを説明する。

  • (1) 下記の為替動向グラフを見るとわかるように平成16年には1ドル=105円前後であった為替相場はその後円安に振れていき、平成18年夏ころには1ドル=120円を突破した。従って平成16年或は平成17年に通貨オプション取引を始めた顧客は、この期間中は利益が出ている筈である。何故なら例えばストライクプライスが113円と設定されていれば実勢相場が1ドル=120円なのに、113円で1ドルを買うことが出来たからである。大半の顧客は何が何だか良く分からないうちに「通貨オプション取引は儲かるものだ。」と悦に入っていたわけである。

  • (2) ところが御承知の通り平成18年夏ころを境にして為替相場は一気に円高に加速していく。するとどういうことが起きたか。平成23年2月現在の為替相場を1ドル=83円とする。
    例えば平成16〜7年ころにストライクプライスを113円として通貨オプション取引を開始した顧客(多くの場合、円安時期に儲けた為購入単位を増やしてその結果月50万ドル或はそれ以上を購入する義務を負わされている場合も珍しくはない。)は、毎月の行使期日に例えば購入単位が50万ドルとすれば113円×50万ドル=5,650万円を銀行に支払って50万ドルを購入しなければならないわけである。この5,650万円は何とか調達したとしても、すぐ翌月の行使期日に又5,650万円を用意しなければならない。ところがその為にはたった今購入した50万ドルを円転しなければならず、その場合83円(現在の相場)×50万ドル=4,150万円にしかならない。
    つまり5,650万円−4,150万円=1,500万円は、顧客が自分の持ち金で補填して、欲しくもないドルを50万ドル分も買わなければならない。言い換えれば5,650万円が一瞬にして4,150万円になってしまうということである。つまり何の見返りもなく毎月1,500万円ずつ(年に1億8,000万円)ただただお金を捨てているとしか言う外ない。しかもこの蟻地獄は神風的な円安にならない限り契約期間が終了するまでの数年間毎月毎月続くのである。多くの企業はこのような経済状況に耐えられない。当たり前である。本業が如何に堅調でも全く無意味なお金がこれだけ流出し、しかもまだまだその状況が続くとなれば、経営者や従業員の士気も下がり、倒産の2文字がちらつくことになる。
  • (3)こういう状況に陥ってしまった企業に対し、銀行が次のような方策を持ちかけ金融庁もそのような指導をしている。
    即ち、「デリバティブ取引を中止したらどうか。それに伴ない発生する損害金は銀行が融資する。」というものである。
    デリバティブ取引は本来途中解約は出来ず、もし途中でやめるなら「現在の為替相場が契約期間の終りまで続くと仮定してその間に発生が予想される差損金をすべて銀行に支払え。」という契約になっている。
    例えば先の例でストライクプライスを113円と設定して毎月50万ドルずつ購入する予約をしてしまった企業は、まだ残存期間が3年あるとすれば顧客はデリバティブ地獄から脱け出す代償として何と(113円−83円)×50万ドル×36ヶ月=5億4,000万円を違約金として銀行に支払わなければならない。しかし、それでなくても既に十分痛めつけられている顧客にそんなお金がある筈はない。そこで「それではその損害金分も銀行が融資しましょう。」という一見救済のように見える申出が銀行から為される。しかし、借り入れたお金(5億4,000万円)は右から左に銀行に行ってしまい、後には返済が残るだけである。従って顧客にしてみれば突然、何の理由もなく5億円以上の債務がドーンと乗ってくることになる。プロパーの債務の外に突然このような債務を負って平気な企業は殆どないであろう(本来、借り入れを起す場合にはその借り入れた金によって設備を購入したり、支店を出したり或は他の借金を返済したり等企業にとって何らかの前向きな使途に用いられる筈であるが、この融資の場合、企業にとってそういうプラス価値はゼロである。借りた金はそのまま銀行の金庫に戻るだけなのであるから。)
    従って、いかにも銀行の良心的行動のように見えるこの融資なるものも、要するに単なる債務のつけ替えである。否もっと言えば、デリバティブ取引を中途解約することで発生する違約金を銀行が取得することは、顧客の損失=銀行の利益を確定することであり(もしデリバティブ取引を続けていれば急激な円安に反転した時顧客の損失が大きく減少する筈なのに顧客はその機会を失うのである。)、決して顧客の為を思っての行動ではない。